平成23年1月から、下肢静脈瘤に対する血管内レーザー治療による血管閉塞法、いわゆるレーザーストリッピングが保険診療可能となりました。
従来からある外科手術のストリッピング術は、根治率は高いのですが、全身麻酔の必要性、切開の大きさ、術後の内出血や痛み、術後合併症としての神経障害、ほとんどの施設では入院が必要、などの理由で、手術をためらわれる方が少なくありませんでした。そうした欠点を減らすため、多くの偉大な先人たちが工夫を凝らした結果、1990年ころから次第に普及していったのが血管内レーザー照射による血管閉塞法です。
そして現在まで、レーザーの機器は飛躍的に改良され、当初問題であった、血管閉塞率、術後の内出血や痛みの程度、なども飛躍的に改善されてきました。この5年の間に当クリニックで行ったレーザー治療の結果も満足のいくものとなっています。
さて今回、特定機器によるレーザー治療が保険適応となりました。下肢静脈瘤に悩まれておられる患者様には朗報です。当クリニックでも早速その機器を導入しました。
ただ、一つだけ残念なことがあります。認定された機器が10年ほど前に開発された、やや古い機器だということです。工学の世界、医学の世界は日進月歩です。10年の間にその性能はかなり向上しています。現在クリニックで用いているレーザー機能は2年前に開発された機器で波長が1470nmで、リング状にレーザーを照射するものです。
波長や照射方法の違いは、水に対する吸収率の違いを生じます。一般に波長が長いほど水に対する吸収率は高く、血管の壁そのものに対して作用する力が増すと考えられています。この違いは、臨床結果として現れてきます。
結論を言うと、波長980nmの機器による臨床成績は、現在使用している最も新しい波長1470nmの機器による成績より多少低いです。血管の閉塞率は多少低下し、術後の内出血や痛みが多少強く表れます。
今後は、保険診療可能な980nmのレーザー治療と、現在も用いている自由診療の1470nmのレーザー治療を、患者様の状態、御希望等を考慮して併用してゆきます。
レーザー波長 | 980nm | 1470nm | 1470nm |
使用状況 | 平成23年1月より 使用中 |
平成21年4月より 平成25年3月まで |
平成25年3月より 使用中 |
費用負担 | 保険診療 | 自由診療 | 自由診療 |
使用する カテーテルの太さ |
5F(1.1mm) | 3〜4F(0.7〜0.9mm) | 5F(1.1mm) |
成績と合併症 | 治験成績* | 当院実績 | 当院実績 |
血管閉塞率 | 93.5% | 99.6% | 100% |
治療直後の 血管収縮度 |
中等度?(詳細不明) |
強い |
非常に強い |
治療後の内出血 | 56.5% (程度不明) |
12% (治療部位の1/4以上) |
1%以下 (治療部位の1/4以上) |
治療後の神経障害 (痺れ・知覚過敏) |
1.6% | 0.4% | 0% |
治療後の深部静脈血栓 (エコノミークラス症候群) |
0% | 0% | 0% |
※治験成績には当院はかかわっておりません。